第30回 EBM勉強会

 

今回は第30回目となるEBM勉強会が行われました。

当院では月に一度、歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士が集まり、論文を読むことで根拠に基づく正しい知識を得て、患者さんに還元できるよう勉強しています。

今回は歯科衛生士2年目となり、初めての発表でした。先輩方にご指導いただきながら、論文を翻訳して読み、内容をまとめて発表させていただきました。

私たちのグループでは、CAMBRAでのリスク患者におけるフッ素応用手段も増えている中、成人の露出した根面齲蝕の予防および阻止手段で薬剤か充填か、どちらの方が有効であるかという疑問を持ちました。

テーマは「根面齲蝕の予防および進行抑制における効果的な処置方法について」です。

前回は同じテーマで薬剤であるサホライドに焦点を当てて調べており、今回は根面齲蝕の修復で使用することが多いグラスアイオノマーセメントを用いた充填について調べました。

選んだ文献がこちらです。

「Prevention of secondary caries using silver diamine fluoride treatment and

casein phosphopeptide-amorphous calcium phosphate modified glass-ionomer cement

フッ化ジアンミン銀とCPP-ACPを配合したグラスアイオノマーセメントを用いた

二次カリエスの予防」

Journal of Dentistry 57 (2017) 38–44

この研究はメルボルン大学と香港歯科大学の共同研究です。

論文の検索サイトPubmedにて5年以内の論文で最も疑問に即していたためこちらを選択しました。

以下に内容をまとめます。

1)目的
研究の目的は、従来のGICまたはCPP-ACPを配合したGICとフッ化ジアンミン銀塗布を組み合わせた時の齲蝕予防への効果を調査することである。

2)方法
修復グループ用の32個の小臼歯に窩洞を形成。

グループ1:従来のGIC修復

グループ2:SDF(38%)治療および従来のGIC修復

グループ3:3%CPP-ACP配合GIC修復

グループ4:SDF 治療および3%CPP-ACP配合GIC修復

修復された歯は、劣化プロセスを経て4種の齲蝕原生細菌に暴露し7日間培養した。

その後①マイクロCTにて象牙質の脱灰の深度を測定、②フーリエ変換赤外分光法により第3象牙質の化学構造の評価および③エネルギー分散型X線分光法で歯根象牙質のミネラル含有量の変化の評価を行った。データは、二元配置分散分析によって分析した。

3)結果

①グループ1〜4のマイクロCTで測定した脱灰の深度は、それぞれ123±6μm、87±7μm、79±3μmおよび68±5μmであった。脱灰の深さに対する相互作用効果が、CPP-ACP配合GIC とSDF 治療の間で見られた(p<0.001)。SDF治療とCPP-ACP配合の両方が、外病変の深さに有意な影響を及ぼした(p<0.001)。

②フーリエ変換赤外分光法では、SDF 処理とCPP-ACP配合GICが第3象牙質の化学構造の変化を評価に有意な影響を与えることを明らかにした。(p = 0.001)

③エネルギー分散型X線分光法より、グループ3および4の修復物に隣接する歯根象牙質でカルシウムとリンの増加を示した。

4)考察
結果は、フッ化ジアンミン銀塗布が二次カリエスの進行に対する耐性を増加させられることを示した。さらに、フッ化ジアンミン銀塗布とCPP-ACP配合のGICを併用した場合、二次カリエスの予防はより実質的であった。回の文献よりフッ化ジアンミン銀塗布のみでも一定の効果が確認されているが、根面齲蝕において実質欠損が生じた場合に、フッ化ジアンミン銀塗布とCPP-ACP配合のGICの併用が適応であると考える。しかし、CPP-ACP配合のGICは現在日本では購入困難であるため従来のGICとフッ化ジアンミン銀の併用が最も効果的であると思われる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は今回初めて一から論文を読み、皆さんに理解してもらえるようにまとめることの難しさを身をもって感じました。知識を得ただけでなく、いかに患者さんにわかりやすく伝えていく大切さを改めて考えることができました。患者さんがより安心できる空間と健康を提供できるよう臨床に活かしていきたいと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です