静岡県立総合病院 歯科口腔外科との診療連携

毎月近隣の有志の開業医の先生方を交えて静岡県立総合病院 歯科口腔外科との診療連携勉強会の機会を設けています。そこでは口腔外科の先生方の症例発表、臨床症例の検討や相談、有益な論文提示やお互いの紹介患者さんについて報告し情報を共有しています。

先日行われた会合では

1.根管治療後に上顎洞炎が発症した症例の相談

2.ソケットリフト+インプラント埋入後5年経過し上顎洞炎が発症した症例

3.整形外科でビスフォスホネート製剤治療を行っている患者のインプラント埋入についての相談

口腔外科の先生方や参加されている先生方からの意見交換が活発に行われました。上顎洞炎については耳鼻咽喉科での対診結果も参照しながら原因や対応について情報交換が行われました。

歯科の範疇を超えた症例は歯科医だけでは対応が難しいですが、医科との連携で適切な助言の元、歯科治療を行っていくことができるので患者さんにとっても有意義なものとなっています。

iTOPイントロダクトリーコース 大阪 

iTOPイントロダクトリーコースが大阪で開催されました。

今回も24名と大変多くの方に参加していただきました。

歯科衛生士さんだけでなく、歯科医師の方もiTOPのセミナーに受講して下さり

予防歯科の考えが段々浸透してきていることを実感します。

セミナーではiTOPの「個々に合わせた口腔の予防」についての講義があり、

その考えのもとCURAPROXのオーラルケアグッズで実習を行います。

皆さん2時間かけてブラッシングを行い日頃のブラッシングを見つめ直す機会になります。

参加者の1/4のクリニックではすでにCURAPROXを医院で導入されているとの

事でした。

セミナー後には、

「歯間ブラシがほとんどの部位入って驚いた」

「CURAPROXを医院で導入しているが、良い製品であるのは知っていたがセミナーを通してちゃんとした知識と実践で勉強ができた」

「iTOPの考えを医院の活動に取り入れたい」とのお声を頂き、大変嬉しく思います。

是非、iTOPを用いて患者さんとコーチングを行い、患者さんが一生涯健康を

維持できるようにサポートして頂ければと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

実際iTOPを応用した臨床をご覧になられたい方は是非見学にいらして下さい。

 

 

第8回 MDH勉強会に参加してきました。

 

 

 

 

 

 

 

8/25(日)大阪にて開催された、第8回MDH(マイクロスコープを活用する歯科衛生士のスタディグループ)の勉強会に当院のDH4人が参加してきました。

メインテーマは「マイクロスコープの更なる可能性」であり、
・超音波スケーラーチップ専門メーカー錦部製作所の錦部社長による、シャープニングのコツ
・白水貿易株式会社のDHによるPーMAX2の特徴
・実際に臨床でマイクロを活用しているDHの発表とグループディスカッションという内容で、進行していきました。

参加人数は100名程で、これからマイクロを使いたいというDHからベテランDH、Drまで様々なポジションの歯科医療従事者同士、活発な情報交換が行われました。

麻生歯科にはDH専用のマイクロが8台あり、改めてその設備環境に感謝しなければと感じたと同時に、最大限に活用してマイクロを使用した精密診査やメインテナンスの価値を患者へ伝えていかなければならないと感じました。

今後もセミナー参加や実技練習を重ね、知識や技術の習得に専念していきたいと思います。

第4回 糖尿病療養指導士講習会に参加してきました 

糖尿病療養指導士講習会に参加してきました。

講義内容は
① ライフステージ別の療養指導
② 合併症・併存疾患の治療・療養指導
でした。

ライフステージは、
・乳幼児期
・学童期(小学生)
・思春期
・妊娠、出産
・就労期
・高齢期
に大別されます。

それぞれのステージにおいて、様々な心理的特徴や療養指導時に注意することを講義していただく中で、私が気になったステージは学童期から思春期にかけておこる小児科から内科への管理移行についてです。
明確な移行時期の決まりごとはないということでしたが、幼児期から糖尿病を抱えている患者さんは小児科にかかっています。成長に伴い一般的に、高校生くらいから内科に管理が移行します。

担当医が変わることは当然ではあるのですが、患者さんが戸惑うことは幼児期からの1型糖尿病と内科受診の多くを占める2型糖尿病との診療の違いです。
1型と2型は成因・治療方法・患者層が異なります。
そんななか患者さんはスタッフの対応や管理体制、科の雰囲気の違いに戸惑いや違和感を覚えることもあるということでした。

麻生歯科クリニックではASO KIDS DENTAL PARKで0歳からの歯科受診に取り組んでいます。
ASO KIDS DENTAL PARKも開業し10年を迎えるなか、麻生歯科クリニック(成人部門)に転院してくる患者さんが増えてきています。

私たちが心がけていることは、

通院履歴はもちろんどのような経過をたどっているか、経過観察している項目はないか、転院に際し不安に感じていることはないかを事前に申し送りを受け、きちんと準備しておくことです。

乳歯列期と永久歯列期、また年齢によってう蝕が発症しやすい部位や予防アプローチは異なります。
そのことをきちんと理解して戸惑いや不安のない転院をしていただき、生涯にわたり健康なお口をまもるサポートをしていきたいです!

お薦めのCAMBRAリーフレット! 

 当院では初診時にCAMBRAという細菌検査を受けていただいております。

患者さん自身にはどうしてもリスクとして捉える習慣がなく、CAMBRAの必要性を理解してもらえないことがあるのではないかと思います。
 そこでCAMBRAを分かりやすく伝えるためのリーフレットを株式会社ヨシダさんが作成してくださいました!!
 みなさん、ご覧になったことはありますか?

 少し内容を紹介しますと・・・
・CAMBRAを行うことによるメリット
・簡単にお口の健康診断を行うことができる
・あなたに合わせた予防方法を導くことができる
                       など

 とてもカラフルでイラストつきなのでとても分かりやすいです。
 当院にもチェアサイドに置いておいたところ、患者さん自ら手にとって読んでくれていました。

 実際に良い検査方法があっても患者さん自身に理解してもらい、受けてもらわなければ意味がありません。患者さんに理解してもらうためのツールの一つとしてとても魅力的なリーフレットになっています。一度CAMBRAを薦め、後日来院日までに考えてきてもらう際の資料としても活用できると思いますので、CAMBRA導入に悩んでいる歯科医院の方にお薦めです。

 

ストーリーテリングの活用

ストーリーテリングという手法をご存知ですか。

 

ストーリーテリングとは、伝えたい思いやコンセプトを想起させる、印象的な体験談やエピソードなどの物語を引用することによって、聞き手に強く印象づける手法のことです。

麻生キッズデンタルパークには、むし歯の細菌群から街(お口)を守る物語があります。

物語になっていることで、むし歯をつくらない良い口腔内の環境にするにはどうしたらいいのか、歯の健康を守るためにはなにが大切かをよりイメージしやすく、記憶にも残りやすくなります。

その結果モチベーションを上げ、行動変容に繋がっていきます。

こうした効果のことも考え、1人でも多くの方の目に触れるようにモニターやパネルを使い物語を紹介しています。

最終的にはむし歯予防の動機付けをうながすことで、1人でも多くの子供たちの口腔の健康を守れる場所にしたいと思っています。

小児歯科診療クオリティアップ勉強会

8月18日10時より赤坂の博報堂セミナー室にて鶴見大学の小児歯科学講座教授である朝田先生による小児歯科学のアドバンスコースに参加してきました。

今回のテーマは”SOAP カルテ記載の重要性

カルテにSOAPを記載することにより問題点を客観的に把握する事ができ、それらに対する診療計画を企て患者さんに提示します。

SOAPの目的は、ただカルテに情報を記載する事が目的なわけではなく、主観的、客観的に患者情報を収集し、順を追って整理して記載する事で患者の情報を院内スタッフ全員で把握し合う事が出来る点に改めてSOAPの重要性を感じる事が出来ました。

小児歯科診療はEBMに基づく医療の考え方だけではなく、NBM(Narrative Based Medicine)物語りと対話に基づく医療の考え方が重要で、診療の計画を立てるには病気だけではなく、患者個人の背景や人間関係を理解し、患者の抱える問題を全人的にアプローチしていこうとする考え方が重要です。

スタッフ皆が患者の情報をSOAPを通して把握しあえる環境を院内に根付かせ、小児の行動予測やリスクの回避を心掛けた医療を提供し続けていこうと思います。

第三回 糖尿病療養指導士講習会に参加してきました

糖尿病療養指導士講習会に参加してきました。
今回の講師は管理栄養士の方と看護師の方で、

講義内容は
① 糖尿病の基本治療と療養指導のうちの食事指導
② 糖尿病患者の心理と行動
③ 療養指導の基本
の3つでした。

糖尿病の基本治療と療養指導として、
薬物療法・運動療法・食事療法という3つの柱があります。
この3つの柱は、私たちが日々関わる歯周病の基本治療と指導と共通することが多いと思います。

食事指導の目的は、糖尿病患者さんが「健常者同様の日常生活を営むのに必要な栄養素を摂取すること」であり、「合併症の発症予防や進展を抑制すること」です。
私が抱いていた今までのイメージでは、糖尿病患者さんは食事が制限される「制限食」でしたが、決してそうではなく、
・適正なエネルギー量の食事
・栄養素のバランスがよい食事
・規則的な食事習慣
の3つを守ることが、食事療法の意義となります。

私たちのクリニックでは、10年以上前から食事アンケート調査を実施しています。
これは主に食事回数や砂糖摂取量、軟食傾向などをチェックしアドバイスするのに役立てています。
食事アンケートをもとに話を伺っていくと、その患者さんの生活背景が徐々にわかってくるのも大変意義のあるところです。

今回、療養指導の基本も「患者さんの生活や習慣をまず聴いて、知ること!」と講義していただきました。

患者さんの心理に迫る講義も興味深く受けました。
これは歯科診療にも共通すると思うのですが、セルフケア支援行動を促すための心理的支援として「変化ステージモデル」というものがあります。
時期・時間、方法、行動を起こす理由のバランスをともに考え、自己効力感(課題達成のための行動が効果的であると考え、できそうと確信すること)を持てるようなアプローチが大切です。

UCSF-CAMBRAからCAMBRA-PBRNへ

UCSF-CAMBRAからCAMBRA-PBRNへ

従来のCAMBRAは、カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)の歯学部を中心に収集したデータを統計分析することによりエビデンスを形成してきました。

しかし、医療研究機関におけるデータとそれに基づく予防歯科の方法論が、実際の臨床においても有用であるという証明はこれまでなされないままでした。

そこで、『CAMBRAというシステムは大学の研究機関という“象牙の塔”(ivory tower:英語圏のスラングで「現実世界と相容れないエリートの世界」の意)だけでなく、“実社会”(real world)においても問題なく機能するものである』──ということを実証するために立ち上げられたのが、CAMBRA-PBRNプロジェクトです。

 

CAMBRA-PBRNの概要

PBRNとは、Practice Based Research Networkの頭文字をとったものであり、直訳すると「実践に基づく研究ネットワーク」となります。

エビデンス形成のためのデータ収集の場を大学から開業医のクリニックに移し、実際の患者情報を蓄積することによって、真に臨床に基づいた予防歯科理論の確立を目指したものです。

こうして、カリフォルニア州はサンフランシスコのベイエリアを拠点として参加する歯科医院を募集し、最終的には20~30人程度の歯科医師が参加して、数百人の患者を対象に2年間のランダム化対照二重盲検試験が実施されました。このように実際の患者から臨床データを集めるにあたっては、いくつかのハードルがありました。

まず、対象となる患者をどのように選定するかです。患者の同意を得るのはもちろんですが、対象となる年齢、残存歯の本数、全身疾患の有無、それにリコールに約束通り訪れたかなど、さまざまな選定条件と除外条件が設定されました。

そして、これは重要なポイントですが、研究に参加するそれぞれの歯科医師の間で診断の整合性をどうとるかが大きな課題でした。複数人の歯科医師が参加しているのですから、例えば同じう蝕をICDASコードで診断したときに、ある歯科医師はコード1、別の歯科医師はコード2というように異なった診断をしてしまう可能性があるということです。このようなばらつきは、当然ながら研究結果の信頼性を損ねることになります。

そこで、参加する歯科医師に対してはキャリブレーション(標準化)の実施が課せられました。講習会やワークショップなどによって診断基準を教示した上で、最終的にはゴールドスタンダードの試験官が歯科医師一人あたり平均13人以上の症例についてテストを行い、DMFT、DMFS、ICDASについて試験官と同じ診断を下せるかどうかを審査しました。ここで一定以上の水準をクリアできた者だけが、CAMBRA-PBRNへの参加を認められたのです。この試験はUCSF治験審査委員会(IRB)にも承認されました(IRB#10–02153)。

その上で、CAMBRAが推奨するリスク毎の予防的介入が実際のところ効果のあるものかどうかを判断するため、観察対象の患者をランダムに介入群と対照群に分け、介入群については定められた推奨処置を実施、対照群についてはプラセボ薬もしくはより効果の限定的な化学療法を用いて、一定期間経過後の両者の新しいう蝕の発生率を比較しました。この研究には、準備段階も含めて2012年から2017年までの5年間が費やされ、合計460人の患者データが統計分析にかけられました。

 

研究結果(抜粋)

下のグラフは、初診時にハイリスクであり、その後のリコールでもハイリスクであり続けた者、つまりミドルリスクやローリスクへの改善が見られなかった者の割合です。積極介入群の方が対照群よりハイリスク者の減少が著しく、すなわちより多くの人に改善が見られたということになります。さらに、時間経過とともにその差は大きくなりました。

一方、下のグラフは、逆に初診時にローリスクで、その後ミドルリスクやハイリスクへと悪化した者の割合を示しています。積極介入群の方が、より多くの患者がローリスクにとどまったことが分かります。さらに、フォローアップ中に新たなう蝕を発症した者の割合は、積極介入群の方が有意に少なくなりました。

こうして、臨床においてもCAMBRAのプロトコルはう蝕予防に有効であることが、エビデンスによって証明されたのです。もちろん、この証明をより確かなものとするためには、今後もさらなる研究が必要になります。

 

今後の展望

CAMBRA-PBRNは、実際の臨床現場からのみデータを収集し分析を行っているという点において、より実社会に即したエビデンスとなっており、UCSF-CAMBRAより一歩進んだステージにコマを進めたと言えるでしょう。もし本邦においても同様の研究を行うことができれば、より日本国内の実情に向けてローカライズした日本版CAMBRAの開発も可能になり、ひいては日本の予防歯科の発展に寄与し得るものとなる可能性もあります。

CAMBRA-PBRNについてのより詳細な最新情報については、CAMBRA基礎編や臨床編などのセミナーの中で随時公開していきたいと考えております。お見逃しなきようよろしくお願いいたします。

 

参考文献

  1. Rechmann, B. W. Chaffee, B. M. T. Rechmann, J. D. B. Featherstone

Caries Management by Risk Assessment: Results from a Practice-Based Research Network Study

J Calif Dent Assoc. 2019 Jan; 47(1): 15–24.

 

 

第29回 EBM勉強会 

テーマは“黒い着色の有無によるう蝕のなりやすさについて”です。

臨床において、黒い着色をもつ子どもたちが存在しますが、原因とう蝕との関連性について疑問をもち、今回の文献を検索しました。

 

文献のタイトルは

Black stain and dental caries in

Filipino schoolchildren

(フィリピン人学童の黒い着色とう蝕について)です。

 

結論は、黒い着色の存在は低う蝕経験と関連しているが、黒い着色のある子どもにおけるう蝕の分布の違いは認められなかった。

黒い着色、う蝕、口腔内細菌叢および食事の相互作用は不明のままであり、さらなる研究が求められているというものでした。

原因については明確にはわかりませんでした。

今回の不明点や、新たな疑問点である“黒い着色を未然に防ぐ方法”についてはブラッシュアップをするなど、今後も患者さんの口腔内を健康に導けるような情報を皆で勉強し続けたいとおもいます。