UCSF-CAMBRAからCAMBRA-PBRNへ

UCSF-CAMBRAからCAMBRA-PBRNへ

従来のCAMBRAは、カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)の歯学部を中心に収集したデータを統計分析することによりエビデンスを形成してきました。

しかし、医療研究機関におけるデータとそれに基づく予防歯科の方法論が、実際の臨床においても有用であるという証明はこれまでなされないままでした。

そこで、『CAMBRAというシステムは大学の研究機関という“象牙の塔”(ivory tower:英語圏のスラングで「現実世界と相容れないエリートの世界」の意)だけでなく、“実社会”(real world)においても問題なく機能するものである』──ということを実証するために立ち上げられたのが、CAMBRA-PBRNプロジェクトです。

 

CAMBRA-PBRNの概要

PBRNとは、Practice Based Research Networkの頭文字をとったものであり、直訳すると「実践に基づく研究ネットワーク」となります。

エビデンス形成のためのデータ収集の場を大学から開業医のクリニックに移し、実際の患者情報を蓄積することによって、真に臨床に基づいた予防歯科理論の確立を目指したものです。

こうして、カリフォルニア州はサンフランシスコのベイエリアを拠点として参加する歯科医院を募集し、最終的には20~30人程度の歯科医師が参加して、数百人の患者を対象に2年間のランダム化対照二重盲検試験が実施されました。このように実際の患者から臨床データを集めるにあたっては、いくつかのハードルがありました。

まず、対象となる患者をどのように選定するかです。患者の同意を得るのはもちろんですが、対象となる年齢、残存歯の本数、全身疾患の有無、それにリコールに約束通り訪れたかなど、さまざまな選定条件と除外条件が設定されました。

そして、これは重要なポイントですが、研究に参加するそれぞれの歯科医師の間で診断の整合性をどうとるかが大きな課題でした。複数人の歯科医師が参加しているのですから、例えば同じう蝕をICDASコードで診断したときに、ある歯科医師はコード1、別の歯科医師はコード2というように異なった診断をしてしまう可能性があるということです。このようなばらつきは、当然ながら研究結果の信頼性を損ねることになります。

そこで、参加する歯科医師に対してはキャリブレーション(標準化)の実施が課せられました。講習会やワークショップなどによって診断基準を教示した上で、最終的にはゴールドスタンダードの試験官が歯科医師一人あたり平均13人以上の症例についてテストを行い、DMFT、DMFS、ICDASについて試験官と同じ診断を下せるかどうかを審査しました。ここで一定以上の水準をクリアできた者だけが、CAMBRA-PBRNへの参加を認められたのです。この試験はUCSF治験審査委員会(IRB)にも承認されました(IRB#10–02153)。

その上で、CAMBRAが推奨するリスク毎の予防的介入が実際のところ効果のあるものかどうかを判断するため、観察対象の患者をランダムに介入群と対照群に分け、介入群については定められた推奨処置を実施、対照群についてはプラセボ薬もしくはより効果の限定的な化学療法を用いて、一定期間経過後の両者の新しいう蝕の発生率を比較しました。この研究には、準備段階も含めて2012年から2017年までの5年間が費やされ、合計460人の患者データが統計分析にかけられました。

 

研究結果(抜粋)

下のグラフは、初診時にハイリスクであり、その後のリコールでもハイリスクであり続けた者、つまりミドルリスクやローリスクへの改善が見られなかった者の割合です。積極介入群の方が対照群よりハイリスク者の減少が著しく、すなわちより多くの人に改善が見られたということになります。さらに、時間経過とともにその差は大きくなりました。

一方、下のグラフは、逆に初診時にローリスクで、その後ミドルリスクやハイリスクへと悪化した者の割合を示しています。積極介入群の方が、より多くの患者がローリスクにとどまったことが分かります。さらに、フォローアップ中に新たなう蝕を発症した者の割合は、積極介入群の方が有意に少なくなりました。

こうして、臨床においてもCAMBRAのプロトコルはう蝕予防に有効であることが、エビデンスによって証明されたのです。もちろん、この証明をより確かなものとするためには、今後もさらなる研究が必要になります。

 

今後の展望

CAMBRA-PBRNは、実際の臨床現場からのみデータを収集し分析を行っているという点において、より実社会に即したエビデンスとなっており、UCSF-CAMBRAより一歩進んだステージにコマを進めたと言えるでしょう。もし本邦においても同様の研究を行うことができれば、より日本国内の実情に向けてローカライズした日本版CAMBRAの開発も可能になり、ひいては日本の予防歯科の発展に寄与し得るものとなる可能性もあります。

CAMBRA-PBRNについてのより詳細な最新情報については、CAMBRA基礎編や臨床編などのセミナーの中で随時公開していきたいと考えております。お見逃しなきようよろしくお願いいたします。

 

参考文献

  1. Rechmann, B. W. Chaffee, B. M. T. Rechmann, J. D. B. Featherstone

Caries Management by Risk Assessment: Results from a Practice-Based Research Network Study

J Calif Dent Assoc. 2019 Jan; 47(1): 15–24.

 

 

CAMBRAを用いたリスク評価

当院では、【CAMBRA】という評価制度を用いてのカリエスリスクを分類し、1人ひとりに合った予防プランを提案しています。

リスクを分類する資料としてCRAフォーム~Caries Risk Assessment Form ~をしようしています。

このフォームでは疾患指標、リスク因子、防御因子の3つの観点から情報収集を行って、リスクを分類していきます。

情報収集を行う際には、患者さんと十分なコミュニケーションを行い、生活背景や患者さんの性格を理解することで患者さんによりそった予防計画を立案します。

 

小児からの早期う蝕予防

厚生労働省が実施する「21世紀出世維持縦断調査」では過去1年間のむし歯治療を受けた割合を2歳半(6.9%)、3歳半、4歳半、5歳半(36.2%)で調査した結果が出ています。う歯は2歳半の6.9%から、5歳半の36.2%に大幅に上昇しています。より低年齢からの予防が重要です。

当院ではキャンブラ(う蝕予防の管理方法)を使用し患者さんの口腔管理を行っています。プロトコル化されているので患者さんにも術者の私たちにも解りやすいく指導しやすいです。そして当院ではすべて永久歯列になったとき「歯列も綺麗でう蝕ゼロ」を目標にしています。

未就学児の場合、小児を取り巻く生活環境がう蝕に大きく関わることがEBM勉強会で確認できました。6歳未満の小児は保護者の傘下にあるため保護者の健康管理に関する知識によりう蝕罹患率に関わります。保護者の方からお子さんまでご家族みんなで健康な口腔内を維持して頂くためのお手伝いができたらと思っています。

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食事アンケート~患者さんの食生活を知るために~

当院で行っているむし歯リスク判定『CAMBRA』では、食事も判定項目に含まれます。

それでは、患者さんの普段の食生活を知るにはどうしているのかというと、『食事アンケート』という物に協力してもらっています。

朝起きてから寝るまでの間、何時に何をどのくらいの時間で食べたのかを記入してもらいます。
これを基にむし歯ができやすい食生活をしていないか、変えた方がいい部分はないかを管理栄養士の資格を持つスタッフの意見を聞いたりしながら、患者さんへお伝えしていきます。
また、小児では食事内容からきちんと顎を使って噛んでいるかなど、口腔内全体の機能発育についても考えます。
あまり噛まずに食べる子どもが増えている現代、歯並びにとって良い影響を与えてあげられるような食事の提案も大切です。

アンケートから現在だけでなく未来を見据えた予防を考えられるよう、日々心掛けています。

食事とpH、虫歯の関係

「砂糖を摂り過ぎるとむし歯になる」というのは、誰もが一度は聞いたことのあるフレーズではないでしょうか?
実際、CAMBRAによるむし歯リスク判定の重要なファクターの一つとして「食事」があります。

私たちが日々飲食をする度に、お口の中の環境は中性から酸性状態へと変化し、歯のミネラルが唾液中に溶け出したり、むし歯の原因菌が増殖するきっかけとなったりしています。
中でも砂糖や酸を含む食べ物(お酢やレモン、炭酸など)は、お口の中のpHを急激に低下させ、瞬間的に酸性状態を作り出す代表的な食品です。
このことから、患者の「習慣的な食事摂取状況」を聞き取ること(何を、何回、どのくらいの時間をかけて食べているのか)は、むし歯のリスクを判定する上で非常に重要な問診事項となります。

私たちは「食べてはいけない」と注意するのではなく、正しい知識を与えつつ、生活の中で実践しやすいようアドバイスをしたり、適切な製品を使ってカバー出来るように予防計画書を作成して指導を行っています。
また、当院では健康食品の一つとして医療機関専用サプリメントの購入も出来るようになりました。

CABMRAのむし歯リスク判定を通じて、望ましい食習慣と健康的な身体つくりのサポートが出来るよう、今後も推進していきたいと思います。

キャンブラ~新時代のむし歯予防、はじまる~ 

数年前から「キャンブラ」という、う蝕のリスク検査で、患者さんのむし歯のなりやすさを評価し予防をしています。
キャンブラとは、アメリカで生まれたむし歯予防管理方法です。最大の特徴はそのシンプルさ。
下記の専用の機械を使い、15秒で一部の検査結果がわかります。
これは、お口に潜む歯垢(プラーク)中のバクテリアの酸を発生させる時のATPの活動量を計測しています。

比較的、お口の健康意識の高い患者さんが
カリエスリスクマネジメントを受けておられます。

むし歯の原因はひとつではなくたくさんの原因がありますが、もっとシンプルに考えてみたいと思います。
天秤(はかり)をイメージしてみてください。
右側に“むし歯になる原因”を乗せてみます。例えばたくさんのみがき残しや間食が多いなどです。
左側に“むし歯を防ぐ行動”を乗せてみます。例えばフッ素の使用や唾液が多いなどです。
このはかりがどちらに傾くかで、その方のむし歯になりやすい危険度が評価できます。
危険度が高くても、その高さによって対策がありますので私たちにおまかせください。患者さん個人個人の生活に寄り添った形での健康管理提案を行いますので、むし歯になりにくいお口の未来を一緒につくっていくことが可能になります。
これから、このう蝕管理方法の有効な点を述べていきたいと思います。