第49回EBM勉強会

7月のEBM勉強会で扱ったテーマは

『歯周病のリスク予測因子について』です。

歯周疾患や齲蝕予防のため口腔内のメインテナンスは重要であり,当院でも健康な口腔内を維持することを目的にメインテナンスで通われている患者が多いです.しかし,歯周病のリスクファクターを抱えながらメインテナンスやSPTを行う場合もあるため,歯周病患者で歯の喪失に繋がる要因について改めて検討したいと思いました.

選んだ論文はこちらです.
Predictors for tooth loss in periodontitis patients: Systematic review and meta‐analysis
歯周炎患者の歯の喪失の予測因子:系統的レビューとメタアナリシス

 

 

当院では定期的にSPTに来院されるコンプライアンスの高い患者が多く、そのような患者は論文からも歯周病由来での歯の喪失本数は少ないことがわかります.しかし、糖尿病や喫煙患者は歯を失うリスクが高まるため初期治療時から患者へ教育行う必要があると感じました.
患者のリスクは変化していくことを考慮し、常にリスクを考えて診療していくことの重要性を再認識しました.

麻生歯科クリニック 歯科衛生士:芝野

12月のEBM勉強会 ワイヤー矯正とアライナー矯正の歯根吸収の差

テーマ:『ワイヤー矯正とアライナー矯正では歯根吸収の差があるのか』

当院ではアライナー矯正に力をいれています。

スタッフ間での知識向上させ、患者さんにより分かりやすく説明ができるようにリスクのひとつである歯根吸収について理解を深める為、以下の論文を選択しました。

 

Orthodontic aligners and root resorption:A systematic review

Gouttieres orthodontiques et resorptionradiculaire : revue systematique

Rajae ELHADDAOUI*, Halima Saadia QORAICH, Loubna BAHIJE, Fatima ZAOUI

Service d’orthopedie dento-faciale, faculte de medecine dentaire, Mohammed V University,

avenue Allal el Fassi, rue Mohammed Jazouli, cite Al Irfane, BP 6212, Rabat, Morocco

Available online: 26 January 2017 / Disponible en ligne : 26 janvier 2017

 

3つの研究が取り上げられています。

1.アライナーを使用した治療後の根吸収率と重症度の評価

2.重い力(225g)と軽い力(25g)を使用して抜歯した臼歯の根吸収の発生率と比較

3.固定器具とアライナーを使用した根吸収の発生率と重症度の比較

 

 

結論としては、アライナーが矯正治療後に根の吸収を引き起こす可能性があることを示した。

ただし、吸収率の発生と重症度は固定器具での矯正で報告された結果と比較して低くなっている。

とのことでした。

 

この内容を踏まえ、日々の診療で説明の中にうまく取り込めたらよいと思いました。

まだまだ、知識不足な部分もありますので、EBMを通して今後も診療に役立つ情報を皆で共有していくことの重要性を改めて感じました。

麻生歯科クリニック 歯科衛生士:杉山

11月のEBM勉強会 セラミックの寿命は?

テーマ : 『セラミック修復の予後、再治療の原因を論文から把握する』

セラミック治療は銀歯に比べ歯によく接着し、劣化が少ないことから歯が長持ちすることは知られています。今回はPdmedよりシステマチックレビューを検索し下記の論文を見ていきました。

Survival Rate of Resin and Ceramic Inlays, Onlays, and Overlays:A Systematic Review and Meta-analysis

S. Morimoto1, F.B.W. Rebello de Sampaio2, M.M. Braga3, N. Sesma4, and M. Özcan5

Journal of Dental Research 2016, Vol. 95(9) 985‒994

論文をまとめると

セラミックの生存率は、

5年で92%から95%(n = 5,811回の修復)
10年で91%(n = 2,154回の修復)

失敗の種類は、

破折/欠け(4%)
歯内合併症(3%)
二次齲蝕(1%)
剥離(1%)
重度の辺縁染色(0%)

セラミックは10年生存率が91%と高い生存率を示していました。セラミックはよく持つということがわかります。

ただセラミックも人工物であるので数パーセントは割れてしまったりでやり直しになることがあります。特に歯ぎしりや噛む力が異常に強い方に多いです。私の臨床経験ですが、稀に割れてしまったり、取れてしまったりすることがありますが、中で大きくむし歯になってしまっている歯はほとんどありません。

麻生歯科クリニック  藤本

第24回 米国歯科大学院同窓会(JSAPD)公開セミナー参加 

年始、毎年楽しみにしているJSAPDのセミナーに参加してきました。

今回のテーマは、

Session 1『ミニマムインターベーションの是非を問う』
Session 2『歯周病と全身疾患 ~エビデンスに基づくコンセンサス~』

で、7名の歯科医師の方々が講演されました。
JSAPD、米国歯科大学院同窓会( Japan Society of American-educated Postdoctoral Dentists )は、海外で大学院を卒業した先生方の集まる会で、今後留学を目指す後輩達のためや、日本の歯科医学の発展への貢献を目的としています。
そのためとてもレベルが高く、刺激を受けられるセミナーです。

今回の1つめのテーマは、私たちの診療の考えに近いミニマムインターベーションでした。エンド、インプラント、補綴に関してそれぞれの専門分野の先生からご講演いただきました。
2つめは昨今話題の、歯周病と全身疾患がテーマで、歯周病の新分類の話、糖尿病・動脈硬化・その他歯周疾患と関連のあるもの、喫煙など盛りだくさんの内容で、私たちが日々の臨床で何となく感じていることや疑問点を最新の文献を用いて説いてくださいました。
多くの文献を理解するのには少し時間がかかりそうですが、最新の確かな知識を理解し診療に還元していきたいと思います。