LANCET 医学論文掲載 「口腔衛生における全世界的な怠慢を終わらせる:今こそ行動のとき」

LANCETは、世界中で最も知名度があり高く評価されている世界五大医学雑誌の一つですが、この論文は今年の7月、そのLANCETに掲載されたものです(Lancet. 2019 Jul 20;394(10194):261-272)。

 現代の歯科医療をグローバルな視点で見たときの問題点、そしてそれを解決に導くための提言が端的にまとめられています。その内容は壮大?にして、理想論的な側面も少なからずありますが、われわれ歯科医療従事者が今、治療以外に何を考えなくてはいけないかについて、重要なヒントを与えてくれているのではないでしょうか。

 

その内容を、以下に要約します。

全世界的に、歯科治療は疾患に対する治療中心であり、根本的な原因への対処にはまったく目が向けられていないという現状がある。

高所得国(HIC)における歯科の問題点は、人口に対する歯科医師数の急激な増加とそれによる歯科医の過剰供給、医原性過剰治療のリスクの増加、および歯科医の失業の増加である。また、歯科医院は裕福で健康な人々が多い都市部に集中しており、幼児や低所得の家族、ホームレスや囚人、それに障碍者といった人々は一般的に十分なサービスを受けられない、需給のバランスが逆転したいわゆる「さかさま医療ケア」の状態がある。

低・中所得国(LMIC)における問題点は、口腔衛生へのアプローチ自体が進んでおらず、特に農村部などの貧困地域においてほとんどの疾患が放置されていることである。一部の国では、口腔医療の人口カバー率がHICの1/8以下となっている。

この問題を解決するためには、歯科医療システムの根本的改革が全世界レベルで必要となる。歯科医療と一般的な医療を分けて考えることなく、健康増進と疾病予防を強調し、人口のニーズを監視して対応する必要がある。理想的なシステムの総合目標は、口腔ヘルスケアを普遍的な健康保険の枠組みに不可欠なものとし、人々のセルフケアを強化することにより、すべての人々に良好かつ公平な口腔健康を達成することである。

そのための提言としては次のようなものがある。

ユニバーサルオーラルヘルスケアの確立:人口カバー率、金銭的負担、サービス品質という3つの側面を充足できるよう、適切な測定基準を策定し、現地の状況に合わせて改善策を講じる。

口腔保健に関与する労働力の改革:歯科医師中心の治療モデルをチームアプローチにシフトさせ、歯科医師ではない者がプライマリヘルスケアシステムの導入レベルで大部分の必須ケアを実施する。そのためには予防と健康増進を主軸としたトレーニングと、適切に実施されているかの監督が必要となる。

社会的ヘルスケアシステムの有効化:民間と公共の両セグメントにおいて、同等のサービスが受けられるようインフラの整備を行う。

モニタリングとデータ収集 分析:大規模なサービスの提唱、概念化、管理、微調整、および提供のため、臨床的エビデンス、医療サービスデータ、および影響評価を実施する。

人口全体を視野に入れたアップストリームへの介入:口腔衛生における社会経済的不平等を減少させるために、他の非感染性疾患(NCD)への対策と連携した大規模な介入政策を行う。

砂糖削減戦略:う蝕の根本原因である砂糖の使用量を削減するため、砂糖含有製品の販売やプロモーションの制限、砂糖含有製品への課税、幼稚園や小学校での間食ガイドラインの策定などを行う。

口腔衛生の政治的優先度の改善:口腔の健康を基本的人権の一部と位置づけ、WHOおよびその加盟国の課題としてより大きな対策がとれるようにしていく必要がある。

 

以上のように、口腔衛生に関連する教育、訓練、研究、健康政策といったシステムの優先順位を普遍的な口腔衛生の人口カバー率向上を目指して調整するには、持続的かつ協調的な政治的支援と、患者とコミュニティを含むすべての利害関係者の関与が必要となる。

いかがでしたでしょうか?

提言された解決策については、一朝一夕に実現するのは難しいのではないかというのが正直なところですが、逆に言えば、このようなラジカルな改革を推し進めなければならないほど、世界の歯科情勢は切迫しているということなのかも知れません。臨床家は日々の診療にどうしても忙殺されがちになりますが、今一度歯科医療の原点に立ち返り、広く社会のためにわれわれにできることは何なのかを、折に触れて模索していくべきではないかと思います。

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