糖尿病を知ることが歯科診療に役立つ!? 院内EBM勉強会〜開催編〜

 

8月の院内EBM勉強会のテーマは,「糖尿病と歯周病の関連性」でした.

PubMedで文献を検索し,

「歯周炎・糖尿病患者における歯周治療の効果:システマティックレビューとメタアナリシス」

という論文を選択しました.

従来のシステマティックレビューはHbA1Cの分析に限定されているものがほとんどであったのに対し,

この論文では全身の炎症に関連するものなど糖尿病合併症のリスクを軽減するための他の分析がなされているのがポイントです.

 

目的:歯周炎および2型糖尿病患者において,歯周治療は代謝コントロールを改善し全身の炎症を低下させることができるか?

方法:2型糖尿病患者において,HbA1CおよびCRPに対する歯周治療の効果を評価,452研究のなかからコクランコラボレーションリスク評価ツールを使用して研究の質を評価し,除外後に残った9つのランダム化臨床試験(RCT)を評価した.

統計解析:歯周治療を受けた群(介入群)と受けなかった群(対照群)を比較してHbA1CおよびCRPに対する歯周治療介入の効果を決定した.

結果:SRPはHbA1Cの低減に効果的であった.

 

 

結論:SRPは2型糖尿病患者の代謝制御と全身性炎症の軽減に影響を及ぼすと言える.

 

発表者の考察:口腔内の炎症と全身の炎症が相互に関わりがあり,歯周治療やメインテナンスをはじめとした口腔ケアが全身の健康に寄与できることが示唆されました.

このことからクリニックの患者の,自覚のある高血糖状態を有する者に対して,口腔の健康への動機づけのひとつになり得,自覚のない者に対しては,その口腔の特徴から気づき,生活習慣へのアプローチを行うことがきる.そして必要があれば内科等との連携により,患者を健康に導くことができると考えます.

 

2型糖尿病と歯周病は生活習慣が大きく関わることから,患者には行動変容,医療者にはそのサポートが求められます.

歯周病は糖尿病の第6の合併症であり相互に関連が認められることから,口腔のみならず患者を“全身的な”視点で見ていく必要があり,それを具体的な行動に起こすことで患者の健康に貢献できるものであります.

 

歯科からの目線のみにはなってしまいますが,おそらく双方の疾患や診療について知らないことが多く,それに疑問や問題を感じていない現状があります.しかし,医療者として,予防や重症化予防ができる可能性を少しでも広げていきたいと感じました.一歩ずつ.

糖尿病を知ることが歯科診療に役立つ!? 院内EBM勉強会〜予告編〜

来月の院内EBM勉強会のテーマは,「糖尿病と歯周病の関連性」です.

糖尿病は歯周病とともに有病率の増加が認められ,それぞれが生活に密に関わる疾患であることから,国民のQOLの低下の要因となりうると考えます.

この2つの疾患の関連性については1990年代から様々な研究で示され,現在歯周病は糖尿病の第6の合併症と定義付けられています.

定義づけられた背景をエビデンスに基づき理解することで,来院患者の口腔のみならず全身の健康に寄与できると考えたことがこのテーマを選んだ背景です.

論文を読み解くことだけでなく,皆が糖尿病についての理解を深められたらと考えています.

8月上旬の勉強会後、ご報告の記事を追加投稿予定です!

第38回EBM勉強会 小児における舌圧と顎顔面の関係性について

6月26日に麻生歯科クリニックとASO KIDS DENTAL PARK合同でEBM勉強会を行いました。

今回の論文のテーマは

Relationship between tongue pressure and maxillofacial morphology in Japanese children based on skeletal classification

(日本人の子どもたちの顎骨の分類による舌圧と顎顔面の関係性について)

J Oral Rehabil.2018 Sep;45(9):684-691

 

この論文を選んだ理由は、臨床において口腔機能不全がみられる子どもたちが多く、不正咬合の有無によって審美面だけでなく筋機能面においても発達に違いがあるように感じたからです。

この論文を読み解き、小児における顎骨と舌機能ついて学ぶことにしました。

以下論文の概要となります。

背景

小児期の舌機能は不正咬合と密接に関連している。矯正治療によって舌機能の改善が可能といわれているが、どの程度舌機能が改善したのかを検査する方法が誰もが安全に同じように使用できるものなのかという疑問がある。

小児の顎顔面形態に対する舌機能の影響を明らかにするために、舌圧および口唇閉鎖力を測定し、骨格分類に従って舌機能と顎顔面形態との関係を評価した。また今回使用した検査方法が臨床の場において定量的な評価基準となりうるのか検証した。

 

方法

100人の子供[平均年齢9.1±1.5歳、男児34人(9.30±1.2歳)と女児66人(9.1±1.5歳)]を対象にし、セファログラムを用いて3つのグループに分けた。

舌圧はJMS舌圧測定装置、口唇閉鎖力はLip deCum®LDC-110R、口蓋容積は非接触3次元デジタイザVIVID910を用いて測定した。

 

結果

結論

1)最大舌圧、嚥下舌圧および口唇閉鎖力は、下顎前突グループよりも上顎前突グループで有意に低く、前後の骨格分類による変動を示している。

2)最大舌圧と嚥下舌圧の間に強い正の相関が観察され、機能評価における有用性が示された。

3)嚥下舌圧と口蓋容積の正の相関は、舌圧と舌機能が口蓋形成に影響を与えることを示した。

4)将来的には、この研究から得られた情報を使用して、歯列矯正治療を必要とする子どもの舌機能を評価することを目指す。

 

以上となります。

私達の考察は、矯正治療中の子どもたちの治療前後の評価としての一つの資料になるのではないかと感じました。咬合・歯列の変化に加え、筋機能面においても、どのような変化が生じたのかを合わせて評価することで、矯正治療のメリットとしてさらに臨床の現場で伝えられるのではないかと考えます。

日本経済新聞「AI、歯科医の常識変える」

当院のセレック治療 保存専門医の風間龍之輔先生が

5月28日の日本経済新聞の

「AI、歯科医の常識変える」という記事で掲載されました。

当院の歯科医は風間先生の指導の下、高度なセラミック修復技術を学んで

臨床に活用しています。風間先生の診療日は毎週水曜です。

 

当院HPのセラミック治療のページと合わせて

是非、ご覧ください。

第37回 EBM勉強会

5月15日 麻生歯科クリニックとASO KIDS DENTAL PARK合同でEBM勉強会を行いました。

コロナウイルス感染対策のためZOOMを利用して行いました。

日々臨床において永久歯先天性欠如を有する患者さんに対応することが多いので

今回は永久歯先天性欠如をテーマとした論文を選択しました。

「永久歯先天性欠如の発現様式のメタアナリシス」です。

EBM20200331ブログ

初めてZOOMを使用し勉強会を行いましたが一同に介さなくても情報を共有できるので

コロナウイルス感染対策を取り今後も合同勉強会を続けていきたいと思いました。

第36回 EBM勉強会

 

麻生歯科クリニックとASOKidsDENTALPARK合同で

EBM勉強会を行いました

文献の題名は

Enamel roughness and incidence of caries after interproximal enamel reduction:

a systematic review

(エナメル質の粗さと隣接歯間エナメル質切削後のう蝕の発生率:システマティックレビュー)です。

 

当院では昨年からinvisalignシステムの導入し、患者さんへ提供しています。患者満足も高くとても良い治療方法だと考えますが、一方でエナメル質を一部リスキングすることによるう蝕の増加や進行について懸念されます。そこで今回のEBMはIPR後のう蝕の増加率を研究したシステマティックレビューを選択し検討しました。

 

文献の結果としては、“IPRで処理した歯の表面と対照歯の表面との間でう蝕の発生に統計的な違いは示されなかった”です。しかし、IPR後の“エナメル質の荒さ”に関してまだエビデンスに基づく結論を引き出すことは困難であり、当院での課題も見えました.

 

第24回 米国歯科大学院同窓会(JSAPD)公開セミナー参加 

年始、毎年楽しみにしているJSAPDのセミナーに参加してきました。

今回のテーマは、

Session 1『ミニマムインターベーションの是非を問う』
Session 2『歯周病と全身疾患 ~エビデンスに基づくコンセンサス~』

で、7名の歯科医師の方々が講演されました。
JSAPD、米国歯科大学院同窓会( Japan Society of American-educated Postdoctoral Dentists )は、海外で大学院を卒業した先生方の集まる会で、今後留学を目指す後輩達のためや、日本の歯科医学の発展への貢献を目的としています。
そのためとてもレベルが高く、刺激を受けられるセミナーです。

今回の1つめのテーマは、私たちの診療の考えに近いミニマムインターベーションでした。エンド、インプラント、補綴に関してそれぞれの専門分野の先生からご講演いただきました。
2つめは昨今話題の、歯周病と全身疾患がテーマで、歯周病の新分類の話、糖尿病・動脈硬化・その他歯周疾患と関連のあるもの、喫煙など盛りだくさんの内容で、私たちが日々の臨床で何となく感じていることや疑問点を最新の文献を用いて説いてくださいました。
多くの文献を理解するのには少し時間がかかりそうですが、最新の確かな知識を理解し診療に還元していきたいと思います。

第35回 EBM勉強会

最近、当院において象牙質知覚過敏症に対する使用薬剤としてグルーマ、ティースメイトを相次いで導入しました。

そこで馴染みのないレジン系DH抑制剤であるグルーマの臨床的効果について調べてみることにしました。

 

 

テーマ「象牙質知覚過敏症における使用薬剤の効果について」  

 

今回引用した論文

Clinical efficacy of resin-based materials for dentin hypersensitivity treatment

Am J Dent 2017; 30(4): 201-204

 

レジン系材料の象牙質知覚過敏症(DH)治療における臨床的効果

 

(目的) 

レジン系DH抑制材の実際の患者への効果を、二重盲検法を用いて6ヶ月後まで診断して評価することで、安全かつ有効な治療法としてレジン系材料を用いることが可能であるかを検討した.

 

(方法) 

DHを訴える30名の成人患者が二重盲検法による臨床試験に参加した.DHの診断は2秒間の圧搾空気による刺激を用いて行った.

DHの痛みの評価はVAS法を用いて判断した(0:痛みなし,10:激痛).30名の成人患者の179歯に対して,コンピューター制御ランダム表に基づき3種のDH抑制材の1つを無作為に塗布した.

DH抑制材としてはクリンプロXTバーニッシュ(3M:CV),クリアフィルSEプロテクト(クラレノリタケデンタル:CP)、グルマ2ボンド(ヘレウスクルツァー:GB)の3種を用いた.

DHの痛みはVASスコアを用いて、術前、術直後、1ヵ月後、3ヵ月後、6ヵ月後に判定した.

 

(結果) 

DH抑制材の治療効果は、CV、CPおよび、GBとも術直後にVASスコアが優位に劇的に減少したが、1、3、6ヶ月間では治療効果に有意差はなかった.

また3種の製品間でも有意差は認められなかった

 

(考察)

 

今回の臨床研究の結果から,レジン系DH抑制材の塗布はきわめて有力な治療法であることが明らかとなった.

臨床実感と異なる結果であったが,今後使用時には確実な防湿をし,長期予後に期待したい.

ただしレジン系DH抑制材はレジン修復を阻害するので適応には症例を選択する必要がある.

 

 

 

 

 

第4回小児歯科クオリティアップ勉強会 

1月19日 赤坂の博報堂ラーニングスタジオにて、鶴見大学の小児歯科学講座教授である朝田先生による「第4回 小児歯科クオリティアップ勉強会 ベーシックコース」に参加してきました。

 

今回のテーマは2つ

障害を有する小児への対応法(知的障害、自閉スペクトラム症、ADHDなど)

精神機能障害児の治療時における問題点

 

障害を有する子どもの分類は主に8つあり、その中に様々な疾患や障害が含まれます。小児歯科の臨床において、何かしらの障害を有する子どもの場合、円滑に診療を行うことは難しいのが現状です。

医療従事者として重要なのは、各々の障害に対する言葉の意味合いを正しく理解すること。また、患者の口腔内だけに視点を置くのではなく、全身に注意を向けながら患者を診ることだと学びました。顔貌の特徴や会話の仕方、場合によっては、SpO2の数値測定や呼吸の有無などの確認は非常に重要なことです。今後の臨床でも、患者の情報を共有し、チームで連携して診療に臨みたいと思います。

 

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在宅歯科医療推進研修受講 

静岡県歯科衛生士会主催の在宅歯科医療推進研修に参加してきました。

テーマは、

「在宅歯科診療の知識・技術を備えた歯科衛生士の育成」
   ~地域における食支援・歯科口腔領域からその一翼を担うため~
「ときどき入院ほぼ在宅とはいうけれど~繰り返す誤嚥性肺炎を防ぎたい!」

で、2つの講演がありました。

1講演目は、「誤嚥性肺炎の実際について」を、三島中央病院外科医師の方がお話くださいました。

ポイントは、

・誤嚥性肺炎は、口腔 咽頭の細菌によって引き起こされる感染性炎症で食物を誤嚥しても即、肺炎になるわけではない。
・誤嚥性肺炎の発症には、誤嚥の病原性(程度・細菌の量と質)と防御機能(喀出力・免疫)が関与する。
・予防とケアには多目的アプローチが必要→口腔ケアやリハビリテーション栄養。

高齢者の約一割が肺炎で亡くなっており、死因の順位も悪性新生物、心疾患の次に肺炎と誤嚥性肺炎となっている現状があります。
誤嚥性肺炎になる前もなった後にも、歯科が介入し、予防や病後のケアで助かる命がたくさんあることを学びました。

2講演目は、事例とテキストで学ぶ「誤嚥性肺炎~入院から退院/なくなるまでのシュミレーション」、社会福祉士の方とケアマネージャーと歯科衛生士ライセンスを持たれている方のお話でした。

私たち歯科衛生士は、「誤嚥性肺炎」という疾患への理解を深めることがまず必要であると感じました。

診断~入院~退院~退院後自宅/施設等~、最期をむかえるまでの流れをイメージする、そんな視点もこれからの歯科衛生士には求められると思います。

  
現在メインテナンスで通院されている方々の口腔もちろん管理も重要ですが、

体力的なものなど様々な理由で通院できなくなった方々に対しても、訪問してケアできるように体制を整えていく必要性を感じました。