上顎犬歯歯胚位置異常について 考察

近年、上顎犬歯は他の歯種に比べて高い発生率で歯胚の位置や方向の異常を起こしています。それにより、埋伏、異所萌出、臨在歯の歯根吸収により保存困難となるケースに多く遭遇します。

 

下記の症例:12歳女子

上顎中切歯と側切歯の間に犬歯が埋伏し、しかも嚢胞化しているのも見受けられます。

埋伏した上顎犬歯は歯冠サイズが大きく、側切歯の歯根は小さい特徴があり、埋伏があることにより上顎骨は狭窄して高口蓋、上顎歯列は狭窄して歯列弓長が短いという特徴があり、正中線に対する犬歯歯胚の歯軸傾斜度が25°を越えると隣接する歯根吸収の危険度が50%まで上昇すると言われています。

 

下記症例:当時8歳男児

上顎骨内にて左右犬歯の歯軸傾斜度が強く、臨在歯の歯根吸収の可能性があります。乳歯列期より骨格性のⅢ級があり、交換期むかえてからも上顎劣成長により骨格性のⅢ級のため、上顎の拡大を行いました。

結果4年後…

萌出方向の転換と骨格性Ⅲ級の改善を行う事が出来ました。

 

今後、下顎の成長期に入りますので、骨格の経過観察を継続し、萌出誘導と共に歯列の整列を視野に入れて治療継続中です。

 

早期に萌出誘導を行うのか、永久歯列期まで待って固定式矯正装置で牽引誘導、歯列の整列を行うのか難しい判断が求めら、患者さんも矯正について考えざる得ない事実を納得していただくのに時間を要することが多々ありますが、残せる歯の一本の命の大切さを患者さんに訴え続け、生涯自分の歯で人生を全うできるような永久歯列をこれからも育てていきたいと思います。

 

 

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